お知らせ

農民と漁民

中沢新一先生です。

「農民と漁民のいちばん大きな違いは、自然との接し方にあらわれている。農民は田をつくり、そこで稲を育てて、米を収穫する。田に水を引いてくるまでに、自然の水流は用水路によってたわめられ、池に溜められ、用心深く調整しながら田に流し込まれる。そこにじつに従順な植物である稲が栽培され、その稲の生育にあわせて、農民の生活サイクルが設計されてきた。つまり、農民は制御され、媒介された自然と、長いことつきあってきたのである。

ところが、漁民のつきあう自然は、もっと荒々しい。養殖場でもないかぎり、漁民は自然状態のままの海を、相手としなければならない。自然のままの海に、けっして安全といえない船に乗って、漕ぎ出していかなければならない。波に揺られ、海中に釣糸を垂れ、網を打つ。けれど水中に生きる魚たちは、稲のようには従順でない。魚には魚の生存があり、彼らからすると、船の上の漁民はにっくき敵なのだ。」

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  • Author:tsukiji-okami